AIによる契約書チェックでは難しいこと

近年AIが契約書をチェックするサービスが普及しています。AIの進化は目覚ましく、契約に潜んでいるリスクを的確に指摘し、そのリスクを回避するための文面案も複数表示してくれます。AIはこのようなタスクが得意であり、人間の作業を強力にサポートをしてくれます。
一方で、AIの限界を理解し、対応可能な範囲のタスクに限定する必要があります。例えば、長年のお得意様との追加取引などいった経緯まで配慮することは困難です。もっとも、これは一通の契約書を初めて見ただけの法律専門家でも同じです。ただ通常、法律専門家は依頼者にヒアリングを行って、当該取引の経緯等を考慮しながら契約内容を確認します。
実務において、相手方から提示された契約書に修正を依頼したあと、相手から「~の内容は、どのようなケースを想定しているのか」「第●条は当社の慣例として記載しているが、修正は必須であるか」というコメントが返ってくるのは珍しいことではなく、このときに「AIによれば~」という回答をする法務担当者は、知る限りいません。
AIから提供される情報は重要な資料にはなりますが、誤りがないか、根拠はあるかなど最終的な確認や、その判断をしたことについての説明責任は人に求められるということに留意しなければなりません。