契約の「権限者(権限を有する当事者)」とは

不備のない契約書作成には、適法かつ妥当な内容、権限を有する当事者、そして適切な締結手続きが不可欠です。まず、契約内容は法令遵守はもちろん、当事者間の特別な合意や業界・地域の慣習に沿ったものであるべきです。
締結手続きとは、契約成立に必要な交渉・確認の完了を指します。交渉後、双方の権限者が契約書に記名押印することで契約が成立します。権限者とは、決定権を持つ当事者であり、個人では原則本人、法人では代表者や所管管理職が該当します。
例えば、営業案件では営業課長以上が権限者とされますが、権限逸脱した社員が契約した場合でも、相手方に過失(明らかに確認不足など)がない限り、契約無効は主張できません。この場合、法的には①契約内容どおりで履行する、又は②損害賠償を想定した解除の申込、が必要です。もっとも「商売はお互い様」という一般概念も広く普及しているので、先ずはビジネス的に調整することで一番妥当な結果に収まると考えます。
権限逸脱した社員への処分は、労働法や社内規定に基づき検討されます。法人契約において権限者は、代表(代理)として契約を進める責任があり、慎重な行動が求められます。社内規程で決定権の範囲や制約事項を確認し、契約条件の適切な判断が重要です。
意見の相違や紛争時には、合理的な解決策を提案し、円滑な契約成立を目指すべきです。契約書の不備は、後々のトラブルに繋がる可能性があるので、作成段階から慎重に内容を精査し、締結することが重要です。