合同会社か株式会社か?設立時の選択と考慮点

会社設立の際、まず検討するのが会社形態です。近年注目を集める合同会社で設立と、 伝統的な株式会社での設立。どちらを選ぶべきか、悩ましい方もいらっしゃるのではないでしょうか。どちらの形態が自社の事業に適しているかは、設立時の優先順位や将来的な事業展開によって異なりますので、慎重な検討が求められるでしょう。会社設立後に変更することも可能なので、先ずは低コストで設立できる合同会社で設立し、更に資金調達して事業を拡大するタイミングで株式会社に移行するというパターンも合理的な選択と言えます。
合同会社の最大の特長は、設立費用や運営コストを抑えられることです。決算公告の義務もありません。原則として所有と経営は一体のため、経営の自由度が高いことも魅力でしょう。しかし、比較的新しい形態であるため、社会的な信用度という点では、株式会社に一日の長があるかもしれません。
一方、株式会社は、資金調達方法の柔軟性が大きな特徴です。特に株式発行で得た資金は、金融機関などからの融資とは異なり、返済義務がないのが大きなメリットです。ただ、役員には会社法に基づく任期があり、改選等の事務手続きやランニングコストも発生します。また株主保護の観点から、株主総会の開催や決議といった手続きも会社法に則った方法で必ず実施しなければなりません。
株式会社 | 合同会社 | |
※ここでは説明の便宜上、取締役や業務執行社員を単に「役員」と記載しています。 ※ここに記載していない事項であっても、定款で原則と異なる定めができる場合があります。 | ||
会社の所有と経営 | 原則として所有と経営は分離する 株主は会社の所有者ですが経営に直接関与せず、経営は株主から選任された役員が行うことが原則です。実際は株主でもあるメンバーが役員に就くことが多いですが、いわゆる「雇われ社長」のように株主ではない役員が代表者として経営を指揮することも可能です。 | 原則として所有と経営は一体 出資者(社員)全員が会社を所有し、役員として業務執行権及び代表権を持ち経営を行うという考え方です。 |
条文 | 会社法第295条、第331条 | 会社法第590条、第591条 |
役員の任期 | 原則として役員の任期は2年 (監査等委員会設置会社の場合は1年) 定款で任期を短く定めることは可能。また未上場会社に限り、定款で最長10年まで伸長可能。 | 原則として役員に任期の制限なし 定款により、業務執行社員や代表社員の任期を定めることは可能です。 |
条文 | 会社法第332条 | 会社法第607条 |
総会 | 株主総会の開催義務あり 毎事業年度(1年)終了後一定の時期に、定時株主総会を開催しなければなりません。 | 総会開催の必要なし |
条文 | 会社法第296条 | なし |
議事録 | 株主総会及び役員会の議事録の作成義務あり 株主総会議事録は毎回作成し、総会の日から10年間本店に据え置かなければなりません。また、役員会(取締役会、監査役会など)を設置している場合は、その議事録についても同様です。 | 議事録の作成義務なし 但し、重要事項は、議事録や決定書などの書面を作成して10年間保管するのが無難です。 |
条文 | 会社法第318条、第371条、第394条、第399条の11、第413条 | なし |
会社設立時定款の認証 | 公証役場の認証が必要 会社設立用に作成した定款は、公証役場での認証を受けてからでないと、法務局へ設立登記申請することができません。 | 公証役場の認証は不要 作成した定款は、公証役場の認証を受けなくても、法務局へ設立登記申請することができます。 |
条文 | 会社法第30条 | なし |
計算書類の公告義務 | 公告義務あり 定時株主総会が終わったら、速やかに貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告する義務があります。 | 公告義務なし 計算書類の公告は、義務付けられておりません。 |
条文 | 会社法第440条 | なし |